「使徒」は福音書で始まったストーリーの続編
ルカは福音書に引き続き、「使徒のはたらき」を記録しました。言ってみれば前編・後編に当たります。各書の出だしがそれをよく表しています。テオピロ、という人物が宛名のようですが、聖書研究家たちはこれは暗号のようなもので実在の人物ではないようです。テオピロというギリシャ語の意味は「神を愛するもの」であり、ルカは神を信じ愛する者たち一般に書き送ったとも考えられます。
「私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。(ルカ 1:1-4)」
「テオピロよ。私は前の書で、イエスが行い始め、教え始められたすべてのことについて書き、お選びになった使徒たちに聖霊によって命じてから、天に上げられた日のことにまで及びました。(使徒 1:1-2)」
さらにルカが注目し、強調しているイエスの言葉があります。それは「証人」という言葉です。イエスが復活ののち昇天する際に弟子達に語った言葉です。
「そこで、イエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて、こう言われた。「次のように買いてあります。キリストは苦しみを受け、三日目に死人の中からよみがえり、その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる。あなたがたは、これらのことの証人です。… そして祝福しながら、彼らから離れて行かれた。(ルカ 24:45-48, 51)」
「『聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、および地の果てにまで、わたしの証人となります。』こう言ってから、イエスは彼らが見ている間に上げられ、雲に包まれて、見えなくなられた。(使徒 1:8-9)」
「使徒」を読み進むと、この「証人」が原動力になっていることが分かります。イエスの生涯・死・復活・昇天は次のストーリーのセクションに入り、聖霊によって強められた信徒たちが証人として歩み、神のストーリーが彼らを通して展開して行くのです。
「使徒」の主要なテーマ
使徒のはたらきは教会の誕生と福音の拡散のストーリーが展開していきます。その中で次の四つの主要なテーマがストーリーの流れを生み出しています。
聖霊
- 聖霊が布教と宣教において信者に力を与えている。
- 聖霊が信徒の大胆さ、奇跡、教会の成長を進める力である。
宣教
- 教会の主要たるタスクは福音を全ての文化、人種、土地を超えて広めることである
- 教会は証人(1:8)でありあらゆる年代においてイエスを証しするよう導かれている。
- 苦しみや迫害はとりもなおさず忠実であることのしるしである。
神の主権とご計画
- 神の御国が聖霊が内に宿ることによって信徒を通して広まっていく。
- 使徒のはたらきは神がアブラハム・モーセ・ダビデにお与えになった約束の続きである。
- 神のことばに忠実であることが宣教を生きる基礎である。
- 教会生活と宣教において祈りが中心である。
多様性の中での一致団結
- 教会は多様性のある様々な文化を持つものたちの集合体である。
- 教会は文化や神学においてことなりがあっても一致団結するよう専念している。
- クリスチャンのコミュニティーでは、仕える姿を持つリーダーシップが見られる。
参考資料
- 使徒のはたらきのシリーズは以下の説教シリーズ、講解書などを参考にしています。
- CA Church ACTS series (2020)
- Acts (The NIV Application Commentary Book 5), Fernando, Ajith. Zondervan Academic.
- Acts for Everyone, N. T. Wright
- 使徒行伝講話 北森 嘉蔵