わたしは生ける者の地で、主の御前に歩みます。
詩篇116篇9節
今日は二つの「アメリカ」を歌った曲を紹介します。一つは悲哀に満ちた、どことなく切ないペーソス溢れた曲です。もう一つは生ける水が溢れるイメージを背景にした曲です。どちらのアーティストもわたしのお気に入りです。
サイモンとガーファンクルの「America」は夢を追いかけて希望の土地、アメリカに生きる若いカップルの旅がベースになっている曲です。幸せとは何か、を問いかけているように思います。愛する人と一緒に楽しい時を過ごし、夢を共有していても主人公は、「僕はどうしていいか分からないんだ。虚しいんだ。どうして心が痛むのか分からないんだ。」とつぶやくのです。
もう一つはリッチ・ムリンズの「Here in America」です。遠い昔の聖書の神イエスなんて、現代では時代遅れだし、自分には関係ないや、と言う声に逆らうかのような曲です。旅路を行く主人公が見渡す風景、耳にする自然の音、人々、その中に、彼はこの歌を通して語ります。「イスラエルの聖なる王がこの地アメリカで僕を愛していてくれているんだ」と。
どちらの「アメリカ」の歌も、普通の生活をし、幸せを追い求めている普通の者達を描いていると思います。曲のトーンも同じようにペーソスに満ちたものだと思います。その歌詞の内容も、自分の人生を重ね合わせることの出来る人も多いのではないでしょうか。
これはわたしの想像ですが、「アメリカ」と言う言葉には土地の名前以上に含蓄のある単語として使われていると思います。それは「アメリカン・ドリーム」であり、自由の象徴であり、夢と希望を表しているかもしれません。また「アメリカ」は表面的な喜びや成功、物質主義を表しているかもしれません。でも、その「アメリカ」にいながら、「アメリカ」と言う希望を追い求めても追い求めても、うつろう蜃気楼のように掴めないもどかしさを感じてしまう、そんな「光と陰」をポール・サイモンは表現したんじゃないかなぁと思ったりします。手にした名声、富、うわべの幸福に幻滅したり、落胆している状態も、また「アメリカ」と言う言葉で表されているかもしれません。
結果、刹那的な、うつろいゆく「アメリカ」にアイデンティティーを探すことは結局「道に迷い、不安に、心が痛む」ことになるのです。でも、リッチ・ムリンズが歌うのは、見渡す限りどこにでも、どんな破れた現実にあっても、自分は故郷にいるんだ、と言う安心感があるんだ、と言うことなんです。それは、全知全能の神イエスが共におり、彼が愛してくれている、と言う事実が揺らぎない安心に、喜びに繋がっているからです。イエスの語る「いのち」がそこにあるからだと思います。
聖書の神は、イエスを私たちが信じ、信仰の道を歩む時に、人生が全て薔薇色になる、とは教えていません。むしろもっと困難に感じる出来事や、信仰の悩みが発生するように思えます。
聖書の「詩篇」でダビデ王は数々の歌を作ったのですが、その多くが苦しみ、悩み、罪の意識、神様が近くに感じられない、なぜ悪がはびこり栄えているのか、神様に訴えかけているものがあります。しかし、ダビデは自分とともにいらっしゃる神様に語るのです。神が共におられるという現実が、世の中の出来事の破れたる現実において、彼にとって勝敗の分け目だからです。冒頭の聖句、「生ける者の地で主の前に歩む」と語るダビデ王の生涯はこの現実に基づいていたと思います。
この2曲のユーチューブ版と歌詞、わたしの対訳を以下に掲載します。
“AMERICA” by Paul Simon & Art Garfunkel
“Let us be lovers, we’ll marry our fortunes together
I’ve got some real estate here in my bag”
So we bought a pack of cigarettes and Mrs. Wagner’s pies
And walked off to look for America「恋人になろう。持ち物を全部一つにまとめるんだ。このカバン一つが僕の全財産さ。」それでタバコ一箱とアップルパイを買ったんだ。そして僕らはアメリカを探し求めて歩きだした。
“Kathy,” I said, as we boarded a Greyhound in Pittsburgh
“Michigan seems like a dream to me now
It took me four days to hitch-hike from Saginaw
I’ve come to look for America”「ねえキャシー、」僕らはピッツバーグでグレイハウンドバスに乗り込んだ。「ミシガンは今 では過ぎた夢に思えるんだよ。だって、ミシガンのサギノーからヒッチハイクで四日もかかってここまで来たから。アメリカを探してたんだ。」
Laughing on the bus
Playing games with the faces
She said the man in the gabardine suit was a spy
I said, “Be careful, his bow tie is really a camera”バスの中で楽しく笑い、人の顔を見てはふざけていた。彼女は、あのギャバジン製のスーツ姿の男はスパイだわと言う。僕は答えた。「気をつけろ。奴の蝶ネクタイは本当はカメラだから。」
“Toss me a cigarette, I think there’s one in my raincoat”
“We smoked the last one an hour ago”
So I looked at the scenery, she read her magazine
And the moon rose over an open field「タバコとってくれる?もう一本レインコートにあると思うんだ」「最後の一本は1時間前にあたしたち吸ったわよ」仕方なく僕は外の景色を眺めた。彼女は雑誌に目を通していた。月が野原の上に昇っていた。
“Kathy, I’m lost,” I said, thought I knew she was sleeping.
“I’m empty and aching and I don’t know why”
Counting the cars on the New Jersey Turnpike
They’ve all come to look for America「キャシー、僕にはどうしていいかわからないんだ。」と彼女に声をかけた。寝ているって知っていたけど。「虚しいんだ。心が痛むんだ。どうしてだか分からない。」僕はニュージャージー州のターンパイク高速道を走る車の数を数えてみた。きっと皆んなアメリカを探しに来たんだなって思いながら。
All come to look for America
All come to look for America皆んなアメリカを探しに来たんだ。皆んなアメリカを探しに来たんだ。
© 1968 Words and Music by Paul Simon
“Here in America” by Rich Mullins
Saints and children we have gathered here to hear the sacred story
And I’m glad to bring it to you with my best rhyming and rhythm
Cause I know the thirsty listen and down to the waters come
And the Holy King of Israel loves me here in America信徒の皆さん、子供達、皆んなここに集まって聖なるお話を聞こうとしるんだね。僕は出来る限り上手な歌詞とリズムでお届けするね。だって心が乾いていれば水のあるところにやってくるってわかってるからさ。イスラエルの聖なる王がこの地アメリカで僕を愛しているから。
And if you listen to my songs I hope you hear the water falling
I hope you feel the oceans crashing on the coast of north New England
I wish I could be there just to see them, two summers past I was
And the Holy King of Israel loves me here in America僕の歌を聴きながら、水が滝のように流れるのが聞こえるといいな。ニューイングランド州の北部沿岸に叩きつける波を感じられたらいいな。2年前の夏に実際にそこに行ったんだ。今そこにいて実際に目の当たりにできたらいいのに。イスラエルの聖なる王がこの地アメリカで僕を愛しているから。
And if I were a painter I do not know which I’d paint
The calling of the ancient stars or assembling of the saints
And there’s so much beauty around us for just two eyes to see
But everywhere I go I’m looking僕が画家だったらどの情景を絵にしようかって悩むんだ。星に導かれた者たちのこと、弟子たちを集めた時の情景かな。僕達の周りには美しいものがたくさんあるんだ。この二つの目で見ることの出来るものには限りがあるんだ。でもね、僕はどこに行っても目を見張っているよ。
And once I went to Appalachia for my father he was born there
And I saw the mountains waking with the innocence of children
And my soul is still there with them wrapped in the songs they brought
And the Holy King of Israel loves me here in America一度アパラチア山脈に行ったんだ。父さんがそこの出身だから。山の朝は、まるでけがれのない子供のように目を覚ますんだ。山から聞こえる歌声に包まれて、僕のたましいは今もそこにいるんだ。イスラエルの聖なる王がこの地アメリカで僕を愛してくれているんだ。
And I’ve seen by the highways on a million exit ramps
Those two-legged memorials to the laws of happenstance
Waiting for four-wheeled messiahs to take them home again
But I am home anywhere if You are where I am数え切れないほどのハイウエイの出口でいつも見るんだ。偶然の法則に従おうとする二本足を見てると、ああ、彼らは4つの車輪のついた救い主たちに助けてもらって故郷に帰りたいんだなって思うんだ。でも僕はどこにいても故郷にいる。神様、あなたが僕と一緒にいてくれるなら。
And if you listen to my songs I hope you hear the water falling
I hope you feel the oceans crashing on the coast of north New England
I wish I could be there just to see them, two summers past I was
And the Holy King of Israel loves me here in America”僕の歌を聴きながら、水が滝のように流れるのが聞こえるといいな。ニューイングランド州の北部沿岸に叩きつける波を感じられたらいいな。2年前の夏に実際にそこに行ったんだ。今そこにいて実際に目の当たりにできたらいいのに。イスラエルの聖なる王がこの地アメリカで僕を愛しているから。
Here In America lyrics © Universal Music Publishing Group, Capitol Christian Music Group