ガリラヤからエルサレムへ、そしてローマへ
2019年から、ルカによる2部作、「ルカによる福音書」と「使徒のはたらき」を読み進み、学んでゆきたいと思います。
イントロ
ルカの福音書1章1節~4節
1・2 私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、3 私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。4 それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。使徒のはたらき1章1節~3節
1 テオピロよ。私は前の書で、イエスが行い始め、教え始められたすべてのことについて書き、2 お選びになった使徒たちに聖霊によって命じてから、天に上げられた日のことにまで及びました。3 イエスは苦しみを受けた後、四十日の間、彼らに現れて、神の国のことを語り、数多くの確かな証拠をもって、ご自分が生きていることを使徒たちに示された。
新約聖書には4つの福音書があります。イエスキリストの生涯、十字架、復活を記した書です。その一つがルカという人物によって書かれました。ルカは新約聖書の福音書の後に出てくる「使徒のはたらき」の著者でもあります。冒頭の聖句はルカの福音書、使徒の働きのそれぞれの出だしの文章です。同じ人物が前編・後編、というような書き方をしたことが分かります。
この2巻の書は、いずれも旅路のコンセプトが随所に出てきます。キリストの誕生、ガリラヤ地方での宣教、そしてエルサレム・十字架への道程がルカの福音書では描かれています。そして使徒の働きではこのイスラエルの辺境ともいえるガリラヤ地方で始まった福音が、イスラエル全土、周辺の国々、そしてローマ帝国に到達していく歴史的な、そして地理的な広がりを描いています。
なぜ遠くガリラヤで始まった、2000年も前のキリストの「福音」が今日の私達の住む世界に届き、そして今の自分の人生に関わっているのか、この2巻の書を読み進み、ルカと共にその旅路を歩みながら考えてみたいと思います。
筆者ルカ
ルカはイエスの他の弟子達がユダヤ人であったのとは異なり、ギリシャ人でした。そのせいか、社会の本流からはずれている者達を思いやり、目を向けていたようです。異邦人、女性達、子供を失ったシングルマザーの記事などなど他の福音書よりも多いのもそれが理由でしょう。めぐみを本来は受けることがないと思われていた者達が神からの無償の愛・恵みを受ける記事が多く見られます。
彼は医者だった、と聖書に書かれています。(コロサイ書4章14節)その影響で、細やかな表現や、使っている単語は具体的なものが多いのです。語彙力があったことは間違いありません。ルカの福音書には7つの異なる単語を用いて「驚く」というコンセプトを表現しています。
後に使徒パウロによって信仰に入ったので、イエスの生涯を目の当たりにし、体験したのではありませんが、彼はそれゆえ、「綿密に調べ」「順序立てて」福音書を書いた、と述べています。自分が見聞きしなかったがゆえに人々の証言をとりまとめ吟味していました。ルカの福音書にイエスの生誕の様子、少年時代が描かれているのは彼がイエスの母マリアからえた証言を伝えたことが分かります。「使徒のはたらき」では使徒パウロが神様によって不思議な方法で導かれルカに出会うのです。そしてパウロの宣教旅行に加わり、自身が使徒パウロと体験したことを書いた箇所が多くあります。それは、「わたしたちは」という記述が随所にみられ、ルカがパウロ達と共に行動していたこと、それを記述したことが読み取れるのです。
さらにパウロは、ルカのことを、「自分の同労者だ」、と紹介しています。(ピレモン24節)事実、パウロが苦境に立った時でもルカだけはパウロと共に過ごしていた、と書かれています。(テモテ第二4章11節)ルカの忠誠心、コミットメントが見て取れるでしょう。
読んでゆく際のヒント
ルカの2部作には、旅を表す表現が多く出てきます。ルカの福音書の4割が旅にまつわる表現だとも言われているほどです。
そうです。ルカの福音書はナザレからエルサレムに向かう旅の書です。イエスの誕生から十字架の死、そして復活へと向かう道が記されています。また、使徒のはたらきは、エルサレムからローマへと向かってゆく旅路です。イエスの復活、昇天、聖霊の降臨、そして使徒たちが福音を広めて行く道が記されているのです。
ルカのひととなりを考え、科学者的な、豊かな表現、単語が使われていることを考え、そして旅路の表現が使われていることを頭にいれて、どうか出来るだけ想像力を働かせながら読み進んでみて下さい。想像力が心と頭の架け橋なのです。事実に触れるて、私たちがその事実を処理しようとする際に想像力が必要です。聖書を読み、すばらしい数々の事実を読み解き、考えるのには想像力を使うのです。
教材
2015年に日本語でのバイブルスタディーをこのトピックで半年間に渡り開催しました。その際の教材や資料が素材になっています。マイケル・カード先生著のルカの福音書 Luke – The Gosple of Amazement や先生のビデオシリーズ、そして「神の痛みの神学」で知られる北森嘉蔵先生の「使徒行伝講和」や、Coquitlam Alliance Church での使徒の働きについての説教シリーズなどをスタディーの内容作りに参照させてもらっています。
出典・参照
- Card, Michael. Luke: The Gospel of Amazement. InterVarsity Press 2011 https://www.ivpress.com/luke-the-gospel-of-amazement
- 北森嘉蔵 「使徒行伝講和」 教文館2010年
- Sermon series, Acts-Spirit/Mission/Church, 2014 https://wearecachurch.com/sermonseries-actsspiritmissionchurch/