ルカ 23:27-43
27 大ぜいの民衆やイエスのことを嘆き悲しむ女たちの群れが、イエスのあとについて行った。28 しかしイエスは、女たちのほうに向いて、こう言われた。「エルサレムの娘たち。わたしのことで泣いてはいけない。むしろ自分自身と、自分の子どもたちのことのために泣きなさい。29 なぜなら人々が、『不妊の女、子を産んだことのない胎、飲ませたことのない乳房は、幸いだ』と言う日が来るのですから。30 そのとき、人々は山に向かって、『われわれの上に倒れかかってくれ』と言い、丘に向かって、『われわれをおおってくれ』と言い始めます。31 彼らが生木にこのようなことをするのなら、枯れ木には、いったい、何が起こるでしょう。」
32 ほかにもふたりの犯罪人が、イエスとともに死刑にされるために、引かれて行った。33 「どくろ」と呼ばれている所に来ると、そこで彼らは、イエスと犯罪人とを十字架につけた。犯罪人のひとりは右に、ひとりは左に。34 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。
35 民衆はそばに立ってながめていた。指導者たちもあざ笑って言った。「あれは他人を救った。もし、神のキリストで、選ばれた者なら、自分を救ってみろ。」36 兵士たちもイエスをあざけり、そばに寄って来て、酸いぶどう酒を差し出し、37 「ユダヤ人の王なら、自分を救え」と言った。38 「これはユダヤ人の王」と書いた札もイエスの頭上に掲げてあった。
39 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリストではないか。自分と私たちを救え」と言った。40 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神をも恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。41 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこの方は、悪いことは何もしなかったのだ。」42 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」43 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」
二つの立場
わたしの学生時代に(もう何十年も前の話ですが)、宣教師のある友人がこんなストーリーをバイブル・スタディーの時にしてくれました。それは大きな野原とそこにある野原を二つに分ける垣根の話でした。
その垣根で区切られた片方は青々とした素晴らしい野原です。もう一方はみすぼらしい枯れた野原です。素晴らしい野原は神の御国であり、もう一方は神から断絶された地獄を象徴しています。
どちらの野原のサイドにも多くのものたちが集っています。加えて、垣根の上でどちらを選ぼうかと考えているものたちも多くいます。 すると、悪魔は垣根の上で悩んでいるものたちを見て大笑いをしています。
「なんであいつらを見て笑ってるんだい?」と聞かれた悪魔は、「言っておくがね、柵は俺様のものなんだよ」と答えました。
コメディーや演芸のオチとして苦笑いしてしまいそうですが、現実を考えるとニンマリ出来ません。ルカにも他の福音書にも一貫してイエスが語るのは従うか否かの二択です。垣根の上の「ちょっと待ってタイム」は選択肢にはありません。
今回の箇所を見ても、イエスに従う者たちの共通の嘆きや悲しみと同時に、イエスを嘲笑い、悪口を言うものたちの姿、そして民衆が傍観している姿が記されています。イエスと共に十字架につけられた犯罪者二人が正反対の態度を示したのがこの世の姿を表しています。
警告
冒頭のイエスの言葉は強い警告の言葉です。イエスの言葉を信じ、神の導きを拒絶したイスラエルに対して起きる裁きの警告です。女たちがイエスが十字架へ歩む姿を見て嘆き悲しんでいましたが、イエスはその嘆きは自分にではなく将来起こる裁きの時に苦しむ自分たちや子供達のために嘆きなさいとさとします。その苦しさは、人々が「不妊の女、子を産んだことのない胎、飲ませたことのない乳房は、幸いだ」と言ったり、山に向かって、「われわれの上に倒れかかってくれ」とか、丘に向かって、「われわれをおおってくれ」と言いだすほどの苦しさであると言うのです。
十字架の上の七つの言葉
イエスは嘆き悲しむ声を受けながら十字架へと歩み、そして二人の死刑囚と共に十字架にかけられました。この二人はまるでこの世の全ての人を象徴するようです。一人はイエスを信じ、一人はイエスを拒むのです。
イエスの十字架上の言葉は七つ記されています。2024年のレントに十字架上の七つの言葉を掲載しました。詳しくはそちらを読んでみてください。(LINK)
- 父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。ルカ23:34
- まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。 ルカ23:43
- 女の方。そこに、あなたの息子がいます。そこに、あなたの母がいます。ヨハネ 19:26
- エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ マルコ 15:34、マタイ27:46、詩篇22
- わたしは渇く。ヨハネ 19:28
- 完了した。ヨハネ 19:30
- 父よ。わが霊を御手にゆだねます。ルカ 23:46
真の神、真の人であるイエスは全ての罪を背負い、世に救いをもたらすのです。それはイザヤがこう預言しています。
「私たちはみな、羊のようにさまよい、おのおの、自分かってな道に向かって行った。しかし、主は、私たちのすべての咎を彼に負わせた。」(イザヤ 53:6)